関連プログラム
7月17日 (日)14:00~15:30
出演:福島諭 桑原ゆう(ゲスト)
福島(以下F): 私は作曲家ということで活動をしておりまして、現在は、IAMAS博士後期課程の方に在籍しております。その中で今回、岐阜県美術館の展示室2の方で展覧会をするという話をいただきましてまずは大変光栄に感じております。当初から展示内容をさてどうするかということで、いろいろと考えてきたわけですが、まず第一に作曲家が考える展示というところで一見分かりにくい所もあるかと思います。今回ゲストにお越しいただきました桑原ゆうさんと共に、そのあたりをひも解いていければいいかなと思っております。少し長丁場になりますが、よろしくお願いいたします。
左:福島諭
まず、なぜ、私が後期博士課程に進もうと思ったかということと、なぜ今回のアーティストトークで桑原さんをゲストでお呼びしたかの話を2つだけさせてもらいます。
なぜIAMAS後期博士課程を入る決心をしたかというのは、やはり、2020年から日本でも拡大しましたCOVID-19の影響が非常に大きくてですね、音楽を人前で発表するという活動をずっとしてきた身としましては、なかなかその「音楽を続けていくこと」の難しさを非常に痛感した時期でした。
その中で、IAMASの活動はWEB等々を通じて、まだその中でも可能性を探っている教員の方や学生さんの姿が見てとれて、後期博士課程が始まるというような話を知ってから、思い切って、そこでまた自分の考えを深められないかというような思いで入ったという経緯があります。
作曲家の桑原ゆうさんはですね、今現在、日本の現代音楽の分野でかなり最先端の活動をされておりまして。
桑原(以下K): どうでしょう(笑)
F: いやいやいや(笑)かなり最先端の活動をされておりまして、端から見ていて、桑原さんの方はですね、私とは違い、作曲の活動もずっとコロナ禍にあってもですね、かなり精力的に国内外問わず作曲を続けてこられた。なぜそれが続けてこられたのかということも含めて、後で話をうかがいたいなと思いますけども…
元をたどっていきますと、2007年に東京の方で一つの日本の伝統的な謡(うたい)と現代音楽を組み合わせた若手の作曲家を集めた企画というのがありまして、そこで私と桑原さんは知り合っています。
そこでの発表を、私は桑原さんの作品を聞き、ここまで日本の謡と現代音楽を融合させる作曲をきちっとやられる方がいるのかと衝撃を受けまして、「あの展示が作曲家である桑原さんにどのように見えるのか」というところを素直に伺いたくて、今回お声がけさせてもらいました。
この後、桑原さんから自身の作品も含めて紹介いただこうと思いますので、このような現代音楽の世界があるのかということを、まず皆さんと共有ができたらなと思います。
では桑原ゆうさん、自己紹介いいですか。お願いいたします。
右:桑原ゆう(作曲家)
K: 桑原ゆうといいます。私は今ご紹介にあずかったとおり、いわゆる現代音楽、現代の芸術音楽のフィールドで主に活動しています。小さい頃から、当たり前のように「ドレミ」で、音楽を勉強してきました。作曲を始めたのは小学1年生の時で、《きりんのおさんぽ》っていう曲を書いたのを覚えています。その頃から作ることとか工夫することとかが好きで、中学生の頃には作曲家に、しかも、芸術音楽の作曲家になりたいと思いました。それは何でか分からないんですけど、新しいものを作りたいと思っていました。
大学に入って自分の作曲について色々考えていく過程で、先程福島さんからお話があった、能の謡のワークショップ…私はその頃大学院の1年生だったんですけれども…に参加する機会があって、それが私にとって日本のものに出会った最初の機会で、ものすごく衝撃的でした。初めて「ドレミ」じゃない世界があるんだって…何て言ったらいいんでしょう、私は西洋音楽だけが音楽だと思っていたけれども、それは片隅だけの音楽の世界で、こちら側にもっと豊かな世界があったっていうことを発見して、びっくりして。若い頃って音をたくさん書きたくて、楽譜が真っ黒みたいな状態で作曲していたのですけど、自分で自分が何を書いているか理解できない状態にあったのが、能の謡を勉強したことによって「ああ、私が欲しかった音の動きとか、ジェスチャーとか、時間の感覚とかってここにあった」って発見したんですね。それが私にとって原動力になりまして、能の謡から遡っていくようにして、日本の言葉と音について考え始めました。
その中で出会ったのが、仏教声楽の声明(ショウミョウ)です。お経に節をつけた、お坊さんの声の音楽のことを声明って言うんですけれども、謡の元になっただけでなく、日本の音楽の全ての祖先と言われています。
で、その声明のために書いた作品がいくつかあるので、まずその中から一つ紹介しようと思いまして。これがパフォーマンスしている写真です。
《螺旋曼荼羅—風の歌?夜の歌—》(2015) スパイラルガーデン https://youtu.be/GEuLSPvEeLY
青山のスパイラルビルのスパイラルガーデンというところで、まさにスパイラルの形になった空間で、《螺旋曼荼羅》という作品を上演しま